ありがとうさようならよりまたあした

Poem
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 辺境の砂漠に窓を一つ設けたのは三年半ほど前。窓からは、最長十七文字の世界が、かわるがわる覗く。その窓が今日で閉じる。(ポエム・バー終了のお知らせ

 始めたばかりの頃は確かまだオフィシャルサイトにBBSがあって、ときどきレスがもらえることが嬉しくて投稿していた。今思えば、今よりさらにアクが強くて痛々しい、黒くてどろどろしたものをよくすくい上げて下さったものだ。その頃のログが行方不明なのが残念でならない。

 終了するという文字を見つけてから一ヶ月、ほぼ連続で投稿した。また他の方の投稿もチェックするようになった(昔はときどきぼんやり眺めるだけで、全てチェックはしていなかった;)。十七文字という制限された文字数で描かれる、広がる草原、まだ雪の残る風景に息を飲んだ。皮肉混じりの呟きや凛々しい立ち姿にはっとさせられた。たくさんの方の、たくさんの言葉に出会えてとても嬉しかった。

 さて、投稿頻度にムラがあるとはいえ、三年半もあればそれなりにログは溜まる。(調べてみたら、手元に残っているのだけで222あった。)というわけで、今までのログの中からいくつかピックアップしてみようと思う。拙い言葉ばかりでなかなかに恥ずかしいけれど……。長いので、興味のある方は続きをどうぞ。


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『サボテン』

どうしてなんだろう、とよく思う。

乾ききった砂漠に幾ら雨を注ごうとも芽など出ない。信じなければ維持できないほど疑わしい感情で、どれだけ言葉を投げかけようとも信じられるはずがないんじゃなかろうか。近づけば近づくほどに、汚らしい部分ばかりが露見して、表面を覆うメッキなどすぐに剥がれ落ちてしまうだろうに。

どうしてなんだろう。
どうしてなんですか?

毎夜毎夜、砂漠には土砂降りの雨が降る。染み込んで、すぐに乾いてしまうのに、雨は繰り返し、繰り返し降る。
雨が絶え間なく降って降り続いて、海になってしまうくらい降ったら、砂漠は砂漠じゃいられなくなるだろう。けれどその頃には、空がカラカラに乾いてしまっているだろう。それに結局、海ができる前に、雨は全部流れていってしまうかもしれない。空も砂漠もカラカラになって、水は少しも残らない。

どうしてなんだろう。
(多分、あのときに、コップの中の水はほとんど零れてしまったんだ。)

サボテンなら、砂漠でも芽吹くだろうか。
棘は痛々しいけれど、そのときは、今よりもっと優しく、空を見上げることができるだろうか。

1月23日の夢2 『トロンボーン』

「なんか、トロンボーンって、名前にしまりがないじゃんか」
俺たちは屋上にいる。沈む夕陽を惜しむかのように、空がオレンジ色に染まっている。
世界中のトロンボーン奏者に対して無礼きわまる発言をぶちかましたのは、俺の隣に立っているYだった。背が低く、いつもおどけているようなYは、クラスのみんなから「ピエロ」と呼ばれていた。
「トランペットとか、クラリネットとか、なんていうか、歯切れがいいよな。それが、トロンボーン、だと、なんか間延びした感じがする」
「おそらく“ボーン”が原因だな」
「そうだ、“ボーン”がいけないんだよ。ジャズとかでも、ピアノ、ウッドベース、サックス、トロンボーーン」Yは、わざと“ボーン”を伸ばして言った。「ほらみろ、トロンボーンだけが間延びしてる。やっぱり“ボーン”がよくない」
「まあまあ。落ち着けよ。他の楽器でも、間延びした名前の、あるだろ」
「トロン“ボーーン”に、匹敵するやつがあるか?」
「“オーーボエーー”なんか、どうだ」
俺は世界中のオーボエ奏者に心の中で謝りながら、Yを慰めようとする。クラシックとか全然聴かないから、一人として顔も名前も思い浮かばないけど。

なんでこんな話になったのか。
発端は、Yの放った一言だった。


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夢小説 - 小説・文学


1月23日の夢 『絵』

背の高い彼は、友人の高校の文化祭に来ている。
そこはまるで、光がその敷地に入ると優しく柔らかく拡散するような、暖かい感じのする学校だった。母校とはまるで違う雰囲気のなかで、彼は自然に肩から力が抜けるような気がしていた。
友人はちょうど、クラスの模擬店の当番をしていた。教室でお好み焼きを焼いている。
「よう」
「あー、来たのか。悪い、あと三十分くらいしたら終わるから」
「作るから、食っていけよ」という友人の台詞に、彼は中学時代の調理実習の時間を思い出した。林檎ジャムを作るのに、友人は砂糖と塩を入れ間違えて、林檎の塩漬けができあがったのだった。
「いや、また後にする。終わる頃に来るよ」
彼はぎこちない笑みを浮かべながらそう言うと、教室を出た。

彼は、お化け屋敷やライブ会場の前の賑やかな廊下を歩いていく。喧騒の中をすり抜け、人通りが少ない方へと向かっていく。ぺたぺたと、彼の足より小さな来客用スリッパが音を立てる。階段の踊り場の窓から、足元に柔らかい光が差し込んでいる。彼は階段を登る。
一番上の階の廊下には、誰もいなかった。図書室があるが扉は閉まっている。その隣に美術室がある。「美術部」とレタリングで書かれた、控えめな看板が扉にかけてある。淡い色を使って彩られた看板が、とても幻想的に見える。
まるで、この学校の空気や、拡散する光を表しているかのような。

彼は開いている入り口から中を覗いた。

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夢小説 - 小説・文学


ほとん

暗い部屋でコードに絡まりながら横たわる僕はテレビを見ている。
テレビには、延々と砂嵐が映されている。左へ右へと流れる白と黒と灰色の光を浴びながら、僕はテレビを見ている。

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醜い鞄

美しいものが好きだった。
美しいものが好きだったので美しいものばかりを集めて、鞄の中に入れることにした。

朝、見上げた空の色が綺麗だったので鞄に入れた。小鳥の囀りが可愛かったので鞄に入れた。緑の葉っぱが輝いていたので鞄に入れた。
昼、パン屋さんでいい匂いがしたので鞄に入れた。川の水が澄んでいたので鞄に入れた。踊るようなピアノの音が聞こえてきたので鞄に入れた。
夕、西日が切なさで溢れていたので鞄に入れた。トンボが寂しそうに飛んでいたので鞄に入れた。影法師の色が儚げだったので鞄に入れた。
夜、晩御飯がとても美味しかったので鞄に入れた。窓の外に厳かな闇が佇んでいたので鞄に入れた。電気を消して、布団の暖かさを鞄に入れた。


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ショート・ストーリー - 小説・文学


風邪

「やぁ、元気だったか地球人」
「何ヶ月ぶりの登場だ宇宙人」
「かれこれ四ヶ月ほどか……私が押入れで引きこもっていたのは」
「引きこもりすぎ! しかも狭いし」
「やっとシャバの空気が吸えたぜぇ〜っ」
「おまえはどこのチンピラだ」

「ところで、世間ではカゼが流行っているらしいではないか」
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つぶやき - 小説・文学


水族館

水族館へ、行ってきた。


久々に長時間列車に乗る。費用の関係で特急をやめて急行にしたら、途中まで混んでちょっとうんざりした。本を読んだり話をしたりして過ごした。しばらくしたら席が空いたので、座ってあんパンを食べた。日差しが暖かい。

町に着いて、簡単に昼食を済ませた。海沿いの公園で少し休憩をしてから水族館へ向かう。
雲行きが怪しくなってきたが、天気予報で雨は夜からだと言っていたから、大丈夫だろう。とはいえ、薄暗くなってきたため、水族館はさびれて見える。施された不思議な配色はくすんでいるようだ。
それでもさすがは土曜日、水族館の中は家族連れやカップルなどでそれなりに賑わっていた。

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コントローラー

私は歩いていた。
なにかを目指すわけでもなければ、なにか理由があるわけでもなく、
どこかへ行くわけでもなければ、どこかから去るわけでもなく、
私は歩いていた。
ただ、歩いていた。


ある日、私は灰色の町の灰色の通りを歩いていた。そこは両側にコンクリートの壁がそびえ立っていて、空は一本の線のようにしか見えなかった。壁にはところどころに窓が口を開けているが、ドアは一つもなかった。通りを歩いているのは私だけだ。
しばらく歩くと、遠くに十字路が見えた。十字路の手前まで来た時、右の角からひょいと顔を出したものがあった。それは、一匹の黒い子猫だった。
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インドカリー

先週の土曜日の話になるが、
生まれて二回目のインドカレーを食べた。

たしか一回目は小学校の時、近くの店に家族で食べに行った。
子供用にとヨーグルトを多めに入れてもらったにも関わらず、とても辛かった記憶がある。
そしてなぜか、店内のテレビでセーラームーンが上映されていたことが印象的だった。

今回は、普段ひきこもっている僕を主にゲーセンなどに連れ出して下さる、某F先輩と行った。
店はベトナム料理とインド料理の両方を扱っているらしい。先輩も、人に聞いたらしく、行くのは初めてとのことだった。


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