山下和美さん

天才柳沢教授の生活 (8) 天才柳沢教授の生活 (8)
山下 和美 (1995/11)
講談社
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山下和美さんの描く人間が好きだ。

僕は山下和美さんの本をそれほど読んでいるわけではない。十年以上前に『天才柳沢教授の生活』を読み、未だ20巻以降は未読という有様だ。あとは『天才柳沢教授の冒険』と『不思議な少年』(これは4巻まで)、『山下和美短編集』くらいである。『ゴーストラプソディー』はかじったけれど、イマイチだったので途中でやめてしまった。
でもとりあえず、代表する作品は『天才柳沢教授の生活』ではないだろうか。物語や登場人物の描写が、巻を追うごとに深みを増していくのが感じられる作品だと思う。

Y大経済学部教授、柳沢良則(やなぎさわ・よしのり)。道路は右端を歩き、横断歩道以外で道を渡らない。やすくてうまい“さんま”のためなら、足を棒にしても歩きつづける。本書は、道路交通法を遵守し、自由経済の法則に忠実な学者の、克明で愉快な記録である。
(カバーの紹介文より)


とにかく人間の内面、心の機微を描くのが巧い。そしてほとんどが1話完結、きっちりとドラマがまとめられている。キャラの一人一人が、喜び、悲しみ、怒り、悩み、真剣に生きている。これほど登場人物に親しみを覚える本を、僕は他に知らない。
とはいえ1巻から読み始めると、作者さんには申し訳ないのだけれど、最初の方の巻はあまり面白くない。上で述べたようなヒューマンドラマの要素が薄いのだ。4巻あたりから徐々に味が出始める。
8巻の『また出会った二人』が好きだ。5巻の『再会の時』も好きだけど。どちらも教授と旧友とのエピソード。(ところで、こんなにもおじいちゃんやおばあちゃんが出てくるマンガも珍しい気がする。山下和美さんのシワの描きかたは、本当に年月を感じさせるから好きだ。)
10巻を超えると、貫禄すら感じる。一話一話が深みを増している。一冊読んだ時に、各話の主役たち全員を好きになっている自分がいる。
開放感というか、安心感というか、読んだ後に心地よい温かさが残る作品である。

ちなみに、ドラマは見ていない。教授の目が細くなかったから。

不思議な少年 (1) 不思議な少年 (1)
山下 和美 (2001/10/23)
講談社

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様々な時代、様々な場所、様々な人間の前に現れる不思議な少年。年齢や性別さえも超越した彼がは、人間の生と死を見つめる。

『不思議な少年』には、人間の生と死、光と闇が、鋭い切り口で描かれている。
1巻の第1話のあるページで、血生臭いシーンに戦慄が走ったのを覚えている。凄まじい絵だった。人間の、どろどろして、荒々しくて、禍々しい部分がむき出しに描かれていたのだ。『柳沢教授』の和やかな雰囲気とのギャップもあったのだろう、かなり衝撃的だった。
どちらかというと暗くて重い話が多い。(そこがまたいいんだけれど。)これはおそらく、死を書くことで生を浮き彫りにし、闇で包むことで光を輝かせる、というスタンスで描かれているからだろう。実際、不条理で絶望的な闇に塗りつぶされた世界はリアルで、わずかな光を抱いてその世界を進もうとする登場人物の心情が真に迫って感じられるように思う。
好きな話は、2巻の『ソクラテス』。あとは4巻のバスジャックの精神世界の話が印象に残っている。


もう一つ、『山下和美短編集』を紹介しよう。
OLが恋に悩み、青年がモデルの娘と恋に落ち、主婦が別世界の自分と会ったり会わなかったり。収録されているほとんどが少女漫画誌に掲載されただけあって、全体的にとてもラブロマンスな印象がある短編集である。
そこに紛れて、バーコード頭のオッサンが叫んでいなければ。
唯一のモーニング掲載作品『ROCKS』。この作品がむちゃくちゃカッコイイ。読むたびにスカッとする。気持ちのいい風が頭の中を突き抜けていくような。バーコードオヤジに惚れましたよ、ええ。
あと『ガラクタ星人宙(そら)を駆ける』も好きだけど。



「人間って、ふしぎだ」
「人間って、おもしろい」

山下和美さんの描く人間が、好きだ。

主題:マンガ - 分野:アニメ・コミック


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Author:さぼてん
1984年生 男
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