太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)太陽の塔 (新潮文庫)
(2006/05)
森見 登美彦

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私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!
クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
(裏表紙の紹介文より)

 面白かった。序盤は、「水尾さん研究」と称してストーカー行為に走りながら、偏った理論でそれを正当化する主人公に、粘っこい気持ち悪さを覚えたが、途中で爆笑してから面白さの方が前に出始め、一気に読んでしまった。
 物語は主人公によって語られる形式で書かれている。その文体はどこか堅苦しくも感じられる文語調で、中には巧みな比喩がぎっしり詰め込まれている。この独特の文体が、物語をより面白く、魅力的に見せている。
 なんといっても、主人公を含む冴えない男たちによる馬鹿馬鹿しいエピソードが面白い。主人公の周りには、かつて同じクラブに所属していた三人の仲間がいて、皆、似たように濃く、似たように女性に縁がない。その一人一人にまつわる過去の話、彼らが集まって繰り広げるストイックで暑苦しい論争や、恋愛至上主義社会への虚しい抵抗が、とにかく笑える。
 笑えるエピソードの合間に、どこか幻想的な風景が覗く。主人公がときに歩き、ときに走る京都の風景。(特に叡山電車を追うシーンが好きだ。)太陽の塔と水尾さんに関する回想シーン、「水尾さんの夢」。深夜の京都の町や、暗く閉じこもった男たちの世界から一転して、明るい風景が目の前に広がる。思わず引き込まれ、その美しさに唸ってしまった。
 波が押し寄せるようなラストには、素晴らしい、の一言。

 ちなみに、むせるほど爆笑したのは「キューブ」の箇所である。二十三時に大声で笑ってしまい、近所迷惑も甚だしかっただろう。

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