ゲド戦記
中学時代に読んだ『ゲド戦記』を読み返した。
実はいまだに、時を経て出た5巻と外伝を読んでなかったからだ。ディテールを再現するために、文字通りイチから読み返したというわけ。間違っても、ジブリが映画化したからではない。いや、実際悔しいし、腹立たしいので、この感想文かつ紹介文にはちっぽけな抵抗の意もあるのだろう。
以下、あらすじと感想。長文注意。
ネタバレというか、引用もかなりします。
冒頭から引用。
多数の島からなる世界、アースシー。その中のゴントという島は、それまでに数多くの魔法使いを生んできた。その一人、ハイタカを主人公として物語は始まる。
彼は幼い頃から魔法の力に長けていた。魔女であるおばに見出され、村を海賊から守り、真の名前を授けられ、授けた魔法使いオジオンの元で学び、さらに魔法の島ロークの学園で学び、みるみるうちに強い力を得ていった。
だが彼はある晩、己の力を見せ付けるために名前を持たない真っ黒なものを呼び出してしまう。
彼はロークを出て、襲い掛かる闇から逃れながら海を渡り続け、色々なものに出会う。その中で自分を追ってくるものが何なのかを明かそうとする。
この本は僕の原点である。
創作だけでなく、日々の考え方にかなり影響を受けている、礎である。
テーマは、引用した詩の通り、光と闇。そして名前の重要性。
この世界では、呼び名とは別に、真の言葉で語られる真の名前がある。成人の儀式で魔法使いやまじない師、魔女からつけられるその名前は、他人に明かしてはならない。もし相手が邪な魔法使いであれば、たちまち心を支配されてしまうからだ。真の名前を知られることは、相手に命を握られることと等しい。(そこでハイタカは自ら呼び出してしまったものの名前を明かそうとする。)
名前とは、存在そのものなのだ。
ハイタカたち魔法使いのいる島々、アーキペラゴ。その東には、カルガド帝国と呼ばれる国がある。そこに住む人々は西に住む人々とは人種が異なり、魔法を邪なものとし、神や太古の力を信仰している。
2巻は「名なきものたち」を祀るアチュアンの墓所が舞台である。そこにはたくさんの巫女が宦官や奴隷を従えて暮らしている。その中でも、魂が消えず絶えず生まれ変わる大巫女は、唯一墓所の奥に入ることができ、「名なきものたち」に最も近い位置で仕える。大巫女は「名なきものたち」に名前を捧げ、「食らわれし者」を意味する「アルハ」という名前を代々受け継ぐ。
その、何代目かのアルハが今回の主人公である。彼女が生まれ、育ち、墓所に入り、大巫女の仕事に慣れてきたある日、決して光を灯してはならない墓所の中で、ほのかな明かりが辺りを照らし出しているのを見つける。そこにいたのは、黒い肌をし、杖を持った一人の男だった。
こちらもテーマは光と闇。でも印象としては闇の方が強い。墓所の世界が強烈過ぎるせいだろう。
視野の狭い者にとって世界は狭く、広い者にとって世界は開ける。
魔法が使えない。歌の意味がわからない。アーキペラゴの中でも西や南の島々から、悪い知らせが次々にロークに届く。
時を同じくして、北にあるエンラッドという島から、一人の若者がやってくる。彼は、大昔の偉大な魔法使いで王でもあったモレドの血を引いており、名をアレンと言う。彼が3巻の主人公だ。島の領主である彼の父は、事の重大さを身に染みて感じており、それを息子のアレンを使いに出すことで示したのだった。
アレンはロークで、今や大賢人となったハイタカと会い、話をするうちに、彼を心から尊敬し、彼に仕えたいと思う。そして大賢人は、真相を知る旅の連れに、アレンを指名したのだった。
かくして、生と死をめぐる二人の旅が始まる。
テーマは生と死。
3巻は映画『ゲド戦記』の軸となっているのだが、映画には、これらの言葉があったのかどうか。
そもそもハイタカはアレンに言っている。
アレンは無垢でなければならないのだ。彼の運命から、無垢であることは必然なのだ。映画ではそれが壊されていやしないか?
「アグニ レバンネン。」
この響きが好き。竜のオーム・エンバーが好き。
2巻の、かつて「アルハ」だった女性、テナーが主人公である。彼女はハイタカに連れられてまずオジオンと共に暮らし、魔法を学んだ。しかし自ら家庭を持つことを選択し、オジオンのもとを去った。
彼女は、夫に先立たれた後、一人の少女を養子として迎えた。その子テルーは、男たちによって虐待され、炎の中に放り込まれていたところをテナーに助けられたのだ。しかし、半分が焼けただれてケロイドとなった彼女の顔や、彼女自身が持つ正体のわからない力を人々は恐れた。
ある日、アレンとの旅の果てに力を使い果たしたハイタカがゴントに帰ってくる。テナーはハイタカを当てにしていたが、彼はもう魔法が使えなくなっていた。
そんな中、テナーのことを目の敵にし、さらにテルーを傷つけようとするものが現れるが……。
テーマは、愛。ジェンダー。それから、魔法使いの掟。
六冊の中では評価はイマイチだが、ここにも自分の原点を見出すことはできた。魔法使いって、ストイックでいいなあ。
竜が暴れている。
アーキペラゴの中心の島ハブナーにできた新しい王は、その知らせを聞いてゴントに使いを出した。
「テルー殿、ハブナーに来ていただけないか」
テナーがテルーをつれてハブナーに向かった時、ハイタカのもとをハンノキというまじない師が訪れる。彼は毎夜、妻を始め死者たちが自分を呼ぶ夢を見ると言う。
竜と夢との関係は? 人は死ぬとどこへ行くのか? 死後の世界だと思っていた場所の真実とは?
テーマはやっぱり生と死。そして死後。さらに竜と人について。
それにしても、死後の世界の種明かしには驚いた。「最終章」と書かれた4巻で、煮え切らないもやもやとした気持ちが残ったが、5巻を読んですっきりした。4巻が生かされた気がした。
アイリアンが好き。
様式の長、アズバーが好き。竜に恋した男。
アースシーの世界の住人のための、5つの短編と著者によるアースシー解説。
『カワウソ』
ロークの魔法学園の始まり。カワウソという男の物語。
『ダークローズとダイヤモンド』
歌が好きで、魔法の才能もあるダイヤモンドという男と、魔女の娘ダークローズとの恋物語。
なんというか、ダイヤモンドの苦悩を今の自分と重ね合わせてしまった。
『地の骨』
ハイタカの師であるオジオンの過去。彼と彼の師匠の物語。
泣いたよ。最後の1ページで。
『湿原で』
ハイタカが大賢人だった頃、ロークに現れた恐ろしい力を持つ魔法使いの物語。
悲しい力は悲しみしか生み出さない。憎しみは憎しみしか生み出さない。
『トンボ』
5巻で出てくるアイリアンの物語。
彼女は自分の力が何なのか、自分が何者なのかを知るため、永らく女性を入れなかったロークの門をくぐる。
実はこれらの短編は5巻の前に書かれていたりする。
でも、5巻はこれらを読んでいなくても楽しめるし、『アースシー解説』はネタバレする可能性もあるので、出版された順と同じく、5巻→外伝の順に読むことをオススメする。その方が「あ、あいつだ!」とか「あの話だ!」とか感動があって楽しいと思う。
総評。
素晴らしい。
読んでほしい。とにかく、読んでほしい。
『ゲド戦記』を知ってほしい。アースシーの世界に足を踏み入れてみてほしい。
海。島々。山。太陽。雲。雨。霧。
草木。森。動物たち。
人々。魔法使い。
竜。
僕にははっきりと、アースシーが息づいているのが感じられる。
作者は、外伝にある『まえがき』で、書き手のスタンスを明らかにしている。彼女は、書きながら世界を創っているというよりは、そこに存在する世界に入り込み、内側から世界を描写しているのだ。
彼女は、アースシーの歴史をロークの図書館で調べ、物語として私たちに語って聞かせる。アースシーの人々の話を聞き、それを書き記す。そうすることで私たち読者をアースシーに導く。
アースシーは確かに存在しているのだ。
実はいまだに、時を経て出た5巻と外伝を読んでなかったからだ。ディテールを再現するために、文字通りイチから読み返したというわけ。間違っても、ジブリが映画化したからではない。いや、実際悔しいし、腹立たしいので、この感想文かつ紹介文にはちっぽけな抵抗の意もあるのだろう。
以下、あらすじと感想。長文注意。
ネタバレというか、引用もかなりします。
![]() | 影との戦い―ゲド戦記 1 アーシュラ・K. ル・グウィン、清水 真砂子 他 (2000) 岩波書店 この商品の詳細を見る |
ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ
飛翔せるタカの
虚空にこそ輝ける如くに
――『エアの創造』――
冒頭から引用。
多数の島からなる世界、アースシー。その中のゴントという島は、それまでに数多くの魔法使いを生んできた。その一人、ハイタカを主人公として物語は始まる。
彼は幼い頃から魔法の力に長けていた。魔女であるおばに見出され、村を海賊から守り、真の名前を授けられ、授けた魔法使いオジオンの元で学び、さらに魔法の島ロークの学園で学び、みるみるうちに強い力を得ていった。
だが彼はある晩、己の力を見せ付けるために名前を持たない真っ黒なものを呼び出してしまう。
彼はロークを出て、襲い掛かる闇から逃れながら海を渡り続け、色々なものに出会う。その中で自分を追ってくるものが何なのかを明かそうとする。
この本は僕の原点である。
創作だけでなく、日々の考え方にかなり影響を受けている、礎である。
テーマは、引用した詩の通り、光と闇。そして名前の重要性。
この世界では、呼び名とは別に、真の言葉で語られる真の名前がある。成人の儀式で魔法使いやまじない師、魔女からつけられるその名前は、他人に明かしてはならない。もし相手が邪な魔法使いであれば、たちまち心を支配されてしまうからだ。真の名前を知られることは、相手に命を握られることと等しい。(そこでハイタカは自ら呼び出してしまったものの名前を明かそうとする。)
名前とは、存在そのものなのだ。
![]() | こわれた腕環―ゲド戦記 2 アーシュラ・K. ル・グウィン (1982/01) 岩波書店 この商品の詳細を見る |
ハイタカたち魔法使いのいる島々、アーキペラゴ。その東には、カルガド帝国と呼ばれる国がある。そこに住む人々は西に住む人々とは人種が異なり、魔法を邪なものとし、神や太古の力を信仰している。
2巻は「名なきものたち」を祀るアチュアンの墓所が舞台である。そこにはたくさんの巫女が宦官や奴隷を従えて暮らしている。その中でも、魂が消えず絶えず生まれ変わる大巫女は、唯一墓所の奥に入ることができ、「名なきものたち」に最も近い位置で仕える。大巫女は「名なきものたち」に名前を捧げ、「食らわれし者」を意味する「アルハ」という名前を代々受け継ぐ。
その、何代目かのアルハが今回の主人公である。彼女が生まれ、育ち、墓所に入り、大巫女の仕事に慣れてきたある日、決して光を灯してはならない墓所の中で、ほのかな明かりが辺りを照らし出しているのを見つける。そこにいたのは、黒い肌をし、杖を持った一人の男だった。
こちらもテーマは光と闇。でも印象としては闇の方が強い。墓所の世界が強烈過ぎるせいだろう。
視野の狭い者にとって世界は狭く、広い者にとって世界は開ける。
![]() | さいはての島へ―ゲド戦記 3 アーシュラ・K. ル・グウィン、清水 真砂子 他 (1977/01) 岩波書店 この商品の詳細を見る |
魔法が使えない。歌の意味がわからない。アーキペラゴの中でも西や南の島々から、悪い知らせが次々にロークに届く。
時を同じくして、北にあるエンラッドという島から、一人の若者がやってくる。彼は、大昔の偉大な魔法使いで王でもあったモレドの血を引いており、名をアレンと言う。彼が3巻の主人公だ。島の領主である彼の父は、事の重大さを身に染みて感じており、それを息子のアレンを使いに出すことで示したのだった。
アレンはロークで、今や大賢人となったハイタカと会い、話をするうちに、彼を心から尊敬し、彼に仕えたいと思う。そして大賢人は、真相を知る旅の連れに、アレンを指名したのだった。
かくして、生と死をめぐる二人の旅が始まる。
テーマは生と死。
「死を拒絶することは生を拒絶することになる。」
「そなたはいつかは死ぬ。いつまでも生き続けるなどということはない。誰だって、何だって、そうだ。永久に生き続けるものなど、ありはしないのだ。ただ、わしらだけは幸いなことに、自分たちがいつか必ず死ぬということを知っておる。これは人間が天から授かった大変な贈り物だ。人間であるという……な。〜(中略)〜人間であるというそのことも、いつまでも同じように続くものではない。変わりもするし、なくなりもする。海の波のひとつと同じでな。そなたは、ひとつの波を救うために、そなた自身を救うために、海を静め、潮の流れを止めようと思うかい? 〜(中略)〜みんながしようとしているのはそれなんだ。それが聞く耳を持った人間が聞いてきたことづてだったんだ。生を拒否することによって死を拒否し、永遠に生き続けるという!」
「わしらの心の中だよ。わしらの心の中にいるんだ。裏切者がな。自我というものがいて叫ぶんだ。(おれは生きたい。生きられるなら、世界中灰になってもいいぞ!)とな。りんごに虫がいるように、わしらの中には、この世の暗がりには、小さな裏切者がひそんでいるんだ。そいつがわしらに話しかけてくる。だが、そいつの言うことがわかるのは、ほんの少数の人間だけだ。〜(中略)〜自分自身であろうと努めている人々だ。自分自身であるということは誰にもそうそうできない、偉大なことだ。だが、永久に自分自身であること、それはどうなんだろう?」(※ 「永久に」に傍点)
「自分自身をよくみつめてごらん、アレン。考えてごらん。『おいで』と呼ぶ声を聞いたことはなかったかな? その声についていったことはなかったかな?」
「ありました。よく覚えています。でも……でも、あの声は向こうの声だと思っていました。」
「そう、向こうの声だった。だが、そなたの声でもあったんだよ。そなた自身の声でなくて、どうして向こうが、遠い遠い海のかなたから、そなたに話しかけることができたものか。」
3巻は映画『ゲド戦記』の軸となっているのだが、映画には、これらの言葉があったのかどうか。
そもそもハイタカはアレンに言っている。
「わしは絶望から発した勧めなど、受けつけはせん。わしは耳も聞こえないし、目も見えない。そなたがわしの道案内だ。そなたは無垢だ。勇気もある。忠誠心にも富む。だからこそ、わしの案内と頼むのだ。」
アレンは無垢でなければならないのだ。彼の運命から、無垢であることは必然なのだ。映画ではそれが壊されていやしないか?
「アグニ レバンネン。」
この響きが好き。竜のオーム・エンバーが好き。
![]() | 帰還―ゲド戦記最後の書 アーシュラ・K・ル=グウィン (1993/03) 岩波書店 この商品の詳細を見る |
2巻の、かつて「アルハ」だった女性、テナーが主人公である。彼女はハイタカに連れられてまずオジオンと共に暮らし、魔法を学んだ。しかし自ら家庭を持つことを選択し、オジオンのもとを去った。
彼女は、夫に先立たれた後、一人の少女を養子として迎えた。その子テルーは、男たちによって虐待され、炎の中に放り込まれていたところをテナーに助けられたのだ。しかし、半分が焼けただれてケロイドとなった彼女の顔や、彼女自身が持つ正体のわからない力を人々は恐れた。
ある日、アレンとの旅の果てに力を使い果たしたハイタカがゴントに帰ってくる。テナーはハイタカを当てにしていたが、彼はもう魔法が使えなくなっていた。
そんな中、テナーのことを目の敵にし、さらにテルーを傷つけようとするものが現れるが……。
テーマは、愛。ジェンダー。それから、魔法使いの掟。
六冊の中では評価はイマイチだが、ここにも自分の原点を見出すことはできた。魔法使いって、ストイックでいいなあ。
![]() | アースシーの風 ― ゲド戦記V アーシュラ・K・ル=グウィン、清水 真砂子 他 (2003/03/21) 岩波書店 この商品の詳細を見る |
竜が暴れている。
アーキペラゴの中心の島ハブナーにできた新しい王は、その知らせを聞いてゴントに使いを出した。
「テルー殿、ハブナーに来ていただけないか」
テナーがテルーをつれてハブナーに向かった時、ハイタカのもとをハンノキというまじない師が訪れる。彼は毎夜、妻を始め死者たちが自分を呼ぶ夢を見ると言う。
竜と夢との関係は? 人は死ぬとどこへ行くのか? 死後の世界だと思っていた場所の真実とは?
テーマはやっぱり生と死。そして死後。さらに竜と人について。
それにしても、死後の世界の種明かしには驚いた。「最終章」と書かれた4巻で、煮え切らないもやもやとした気持ちが残ったが、5巻を読んですっきりした。4巻が生かされた気がした。
アイリアンが好き。
様式の長、アズバーが好き。竜に恋した男。
![]() | ゲド戦記外伝 Ursula K. Le Guin、アーシュラ・K・ル=グウィン 他 (2004/05/28) 岩波書店 この商品の詳細を見る |
アースシーの世界の住人のための、5つの短編と著者によるアースシー解説。
『カワウソ』
ロークの魔法学園の始まり。カワウソという男の物語。
『ダークローズとダイヤモンド』
歌が好きで、魔法の才能もあるダイヤモンドという男と、魔女の娘ダークローズとの恋物語。
なんというか、ダイヤモンドの苦悩を今の自分と重ね合わせてしまった。
『地の骨』
ハイタカの師であるオジオンの過去。彼と彼の師匠の物語。
泣いたよ。最後の1ページで。
『湿原で』
ハイタカが大賢人だった頃、ロークに現れた恐ろしい力を持つ魔法使いの物語。
悲しい力は悲しみしか生み出さない。憎しみは憎しみしか生み出さない。
『トンボ』
5巻で出てくるアイリアンの物語。
彼女は自分の力が何なのか、自分が何者なのかを知るため、永らく女性を入れなかったロークの門をくぐる。
実はこれらの短編は5巻の前に書かれていたりする。
でも、5巻はこれらを読んでいなくても楽しめるし、『アースシー解説』はネタバレする可能性もあるので、出版された順と同じく、5巻→外伝の順に読むことをオススメする。その方が「あ、あいつだ!」とか「あの話だ!」とか感動があって楽しいと思う。
総評。
素晴らしい。
読んでほしい。とにかく、読んでほしい。
『ゲド戦記』を知ってほしい。アースシーの世界に足を踏み入れてみてほしい。
海。島々。山。太陽。雲。雨。霧。
草木。森。動物たち。
人々。魔法使い。
竜。
僕にははっきりと、アースシーが息づいているのが感じられる。
作者は、外伝にある『まえがき』で、書き手のスタンスを明らかにしている。彼女は、書きながら世界を創っているというよりは、そこに存在する世界に入り込み、内側から世界を描写しているのだ。
ちょっとのぞいてみると、私が見ていなかったあいだに、アースシーではいろいろなことが起きていた。もどっていって、「現在」(いま)何が起きているのか、見きわめなくては、と私は思った。
彼女は、アースシーの歴史をロークの図書館で調べ、物語として私たちに語って聞かせる。アースシーの人々の話を聞き、それを書き記す。そうすることで私たち読者をアースシーに導く。
アースシーは確かに存在しているのだ。
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